映画『世界から猫が消えたなら』を観た。
悪魔との約束。延命と引き換えに世界から物事が1つ消されていく。
その物事とは主人公にとって大切なもの、あるいは大切な思い出をはらんだもの。
電話を消すことで昔の彼女は彼のことを忘れ、映画を消すことで親友は彼のことを忘れる。
主人公は物事が消されるとともに、周りの大切な人たちから忘れられていく。
物事にまつわる思い出まで消えていく。
彼はどんどん孤立する。
彼のそばには猫しかいない。
その猫さえ消されそうになり、彼はようやく気づく。
自分と相手のあいだにある物事。
生きるということは両者のあいだにある物事、あるいはそれにまつわる思い出を大切にするということなのではないか。
彼と母(あるいは父)とのあいだには猫がいた。
猫を消すことより自らの死を選ぶ主人公。
自分が相手を忘れること、相手から忘れさられることとは死に値すると気づいたのである。