そっと きっと
長く住んだこの街から離れます。
20歳の頃から12年。
色々な思い出があります。
仲の良かった友人たちは
すでにここを去っています。
ぼくは彼らの背中を見送ってきました。
見送ったあとの街並みは
寂しくみえました。
初めてこの街にやってきたとき、
賑やかな雰囲気に心を躍らせました。
しばらく住んで、
その賑やかさが疎ましくなり
今では表通りを歩くことは
めったにありません。
歩き慣れた裏通り。
色々な悩みや楽しみを抱えながら
いつも歩いていました。
友人たちが去ったあとの帰り道。
いつまでぼくはここにいるのだろう、
と取り残された思いで歩きました。
それでも歩いて歩いて歩いた12年。
ぼくがこの街を離れることに対して、
取り残されたという思いを抱える友人は
もういません。
見送って見送って見送ってきた12年。
ぼくはそっとこの街を離れます。
またいつか裏通りを歩きたいと思います。
そっと、きっと。